Munchen3


Alliantz Arenaがミュンヘンの空気を結晶化した建築だったとすれば、ミュンヘンオリンピックパークの透明な大屋根もこのミュンヘンの空気の中でこそ共感できる。たぶん僕が今までで最も感動した建築の一つ。技術のレベルはもちろん、空間としての質もすごい。設計はドイツ人建築家であり技術者でもあるフライ・オット。

この建築は隣の丘からの俯瞰で撮った写真が最も有名。ここからの視点だと、メンブレンが光を反射して彫塑的でモニュメンタルな外観に見える。

しかし、その下の空間での体験はその印象からは全くかけ離れている。丘の上に薄くかかった雲のような建築。非常に透明な屋根。
膜屋根が作り出す影。


構造材も上からみたごつい印象ほど気にならない。

この公園の施設全体が一つの大きな屋根に寄って覆われているのだが、場所によって様々な膜の吊り方が試みられていて見ていて飽きない。一番面白いのはやっぱりメインスタジアムの入り口付近だろうか。巨大な柱から重りが下りてきていて、そこから2方向にメンブレンが吊られている。



構造材は格子状の太い影ではなく、その下の細い線。驚くほど細い。
黒く太いのは面同志を繋ぐジョイント。この透明な面のユニットはそれぞれ異なる形、穴の位置をしている。曲面屋根の構造を作るのも大変だが、そこに更に面を作るのも大変だ。



ついつい屋根にばかり目がいってしまうけれどその下のスタジアムも端正だが美しい造形。

楕円形のスタンドはホームストレート側で最も高くなりそこから緩やかに下って反対の位置のところで最も低くなる。バックスタンドからメイン側を見ると観光客が山の稜線を歩く人のように見える.


メインスタジアムだけでなく、屋内体育館や室内プールにも連続して膜構造の屋根が架けてある。

室内は地面からガラス壁を建てて、囲っている。屋内施設の屋根は2重になっている。大屋根からは指示材が下方向に出ていて、それらで一枚内側にある布を吊っている。空気的にはこの内側の布で切れている。屋根の構造/雨仕舞と空気的に切れた環境を作り出すという2つの機能が分離されていて、その間を覗き込めるのがおもしろい。室内プールのみ一般の利用可能。湿度が高くて、カメラのレンズが曇る。

このガラス壁の構は非常にごつい。
頭が梁でつながっていないので、地面からキャンチで建っていることになるから水平力には弱いはず。そのせいだろうか?


このガラス壁と大屋根との取り合いも注目。
膜構造のような柔軟な構造にはこれまた柔らかいジョイントでなければ対応できない。抱き枕のような筒状の膜で間を上手く埋めている。